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闇へのご案内~すすきの黒服、客引き体験録

 おれは18で函館の高校を卒業したあとは地元七飯を離れて札幌の音楽専門学校に進んだ。そこを2年で卒業したあと路頭に迷った。とりあえずは居酒屋でバイトを初めて糊口をしのぎ、その後いくつもの職を転々とした。その辺に関してはまた機を改めて書きたいと思うのでそちらに譲るとして、ともかくも何をやっても駄目で、長続きもせず、また糞みたいな待遇の仕事ばかりでは長く続ける意味も無く、このままではどう転がっても未来は闇であった。そこで転がり込んだ先が北日本最大の繁華街、すすきのであった。

 当時のおれはものを知らない純粋無垢な洟垂れ坊主で、まだ見ぬ世界にならチャンスが転がっているのではないかと短絡的に考えていたのであった。純粋無垢なおれはすすきのなどファッションヘルスやソープに何回か行ったことがあるくらいで、あとはせいぜい北24条のピンサロにしばし通っていた時期がある程度だ。純粋無垢なのでキャバクラだのなんだのというのはまったくの未知で、すすきのは人外魔境のごとくにしか思えなかった。だからこそ可能性があると思ったのだろう。東京に行きさえすればなんとかなると思って上京しネカフェ難民になるアホとあまり変わらないメンタリティと言えよう。

  欲望渦巻くあの街に純粋無垢なおれが飛び込むのは勇気のいることであった。何も知らなかったので普通のアルバイト情報誌を見て適当に応募したのが某パブであった。パブがなんなのかも知らなかったくらいである。
 すすきののいわゆる「飲み屋」、つまり女が付いて酒を飲む店は、大衆が行ける範囲では大きく4種類に分けられる。すなわち「ニュークラブ」「パブ(クラブ)」「キャバクラ」「スナック」である。まずパブはどちらかというとスナックに近い雰囲気であるが、いわゆるママがいるのではなく、若い子ばかりでカラオケが付いており、わいわいと騒ぐ安い店といった感じである。ニュークラブ(略称ニュークラ)は高級クラブとパブの中間といった感じで、高級クラブの雰囲気を漂わせつつもそこまで高くなく、一般サラリーマンでも入れるレベルになっている。だが女の質や店内の雰囲気などはパブなどよりずっとレベルが高く、カラオケもVIPルームを除いてはついていないので落ち着いた雰囲気で飲めるようになっている。そして本州で言うセクキャバ、おっパブ(お○ぱいパブ)のことをすすきのでは何故かキャバクラと呼んでいる。要するにまあ、女にお触りが出来る店だ。キャバクラにもソフト系ハード系、ダウンタイム制、オールダウンなどあるのだがそれはおいおい語るとして、今回おれが応募したのはそんな中での「パブ」という業種の店だ。当然この時点ではそんな種類区分などまるでわかっていない。
 面接の日、いや夜、件の店まで行くために地下鉄南北線に乗り、すすきの駅で降りた。確か2002年の2月だったと思う。例によって純粋無垢なおれはこんな時間のすすきのには来たことがなかった。風俗店は昼間に行っていたのである。道行く人々のひしめき合う様、昼間の大通公園ではまず見ないであろう風貌の業界人、巨大なビルが建ち並びネオンが煌々と輝く情景におれは圧倒された。早くも怖くなり、泣きそうになっていたと思う。
 その上店までの道がわからない。おれは方向音痴なのだ。ご存じの通り札幌は碁盤の目状に区切られており比較的わかりやすい地形になっているのだが、それでも慣れぬ場所での探索は難事業であった。信号機についている番地表示を見上げながらウロウロしていると、突然声をかけられた。
「なにビルお探しでした?」
   
 高そうな柄の悪いスーツに身を包み、ツンツンに尖らせた茶髪、やはり高そうで柄の悪い眼鏡、詐欺師みたいなあくどい顔。純粋無垢なおれはそんな怪しい奴に声をかけられて驚いた一方で、すすきのにはこうして道案内をしている人がいるんだなと思った。
 ビル名を告げると探している店の名前を訊かれたのでそれも言った。やがて客ではなく面接で行くのだということがわかると、場所を教えてくれたあとで、
「そんなとこ行くよりウチ来た方がずっと稼げるよ。何人いてもいいんだわ」などと言う。この男はぼったくりの客引きだったのだが、もちろんその時はそんなことはわからない。実を言うとおれはこいつに以前も声をかけられている。先述の音楽専門学校の入学式が狸小路にあるビルで行われるので上札したばかりのおれはそこを目指し、無事道に迷ってすすきのまで来てしまったのだ。そこでも「なにビルお探しでした?」と声をかけられた。当然すすきのにそんなビルはない。狸小路だと言うと方角を教えてくれた。あれから三年ほどして彼はまたしても「なにビルお探しでした?」とおれに声をかけてきたのである。三年経っても彼は客引きであり、おれは道に迷っていたのであった。親切なぼったくりに別れを告げ、おれは目的地を目指した。
 たどり着いた先のFという店では30代と思われる男の店長が開店準備をしていた。この時のおれは確か21歳だったと思う。パブなので店はそれほど広くない。スナックに毛が生えた程度のものだ。そこで面接を受け、見事合格したおれは翌日からいわゆる黒服となった。
 慣れないスーツに身を包み、夜の十九時に来て開店準備をする。床に掃除機をかけたりおしぼりの用意をしたりした。二十時近くとなると何人かの女が出勤してきた。茶色で、前衛芸術かジョジョか宇宙人のようにしか見えないいわゆる「盛り髪」。服は派手にして化粧濃し。パブだからニュークラやキャバと比べるとそこまで派手でもないが、それでも純粋無垢なおれには十分に未知との遭遇であった。なにせ当時のおれはジョン・レノンみたいな丸眼鏡をかけた陰キャだったのである。
 そのFというパブは客入りのよろしくない店であった。開店時間の二十時を回っても一向にテンカラ状態が続いた。「テンカラ」とは「店内空(テンナイカラ)」の略で、客がゼロの状態という意味である。なので店長がキャストを連れてビラに出て行った。世間一般ではこういった「飲み屋」の女のことをホステスと言っているが、業界ではキャストと言っていた。ビラとはビラ配りのことで、路上で店のビラを配りながら食いついてきた客をその場で交渉し店まで連れてくることであった。「客引き」とは違うのだがそれもおいおい語ることになるだろう。
 その間店はおれと、残った女だけになることもあればおれだけになることもあった。右も左もわからないおれ一人を残して行ったのだから不用心というか、それだけ客が入っていない店だということなのだろう。だがそんなときに客が来ることもあり、おれは大いに慌てた。なにせおれはそれまで接客業などやったことのない四半コミュ障みたいなものなのだ。突然あらわれたおっさんどもをあしらう術も知らず、というかそもそも教えられていなかった。慌てて携帯電話で店長を呼ぶしかないのだ。おしぼりを出すとかチャームを出すとかそういうことも出来ないので店長が来るまで何も出来ない。そんな事情など知らず怒鳴ってくる客はマザファッカーにしか思えなかった。
 そんなわけで夜も更けてくるとさすがにボチボチ客が入ってくるのだが、仕事のほとんどは店長がやって、おれはほとんどなにもしていなかったように思える。そういう点ではあまり人を使うのが上手い店長ではなかったのかも知れない。
 そうして営業をしていると夜が更けていく。それまで夜勤などやったこともなく昼間の人間だったので、日付が変わる頃には眠くなってきた。仕事は翌朝五時までだった。
 Fを運営する会社の社長だという男が閉店後に来たこともあった。40代くらいで茶髪の、バブルのにおいを感じさせる奴だった。黒服は客や女の子を楽しませるスキルがないと駄目だが、お前はそれが出来るのかなどと聞かれたが、先述したようにおれはジョン・レノン眼鏡なのである。ポール・マッカートニーのようなエンタメ性など持ち合わせていなかった。なのでありませんと答えるとカラオケの流れとなり、おれはケツメイシの「ビールボーイ」を披露した。当時は大塚愛の「さくらんぼ」が流行っており、店内の有線放送でよくかかっていたのを覚えている。女たちがカラオケで歌うのもそればっかりだった。
 そんなこんなで一週間ほど経った頃合いだったと思う。異動を命じられた。ここの会社はもうひとつ系列の会社があり、キャバクラとファッションヘルスを運営していた。そこのキャバクラへ行かされることとなったのである。

 

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