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闇へのご案内~すすきの黒服、客引き体験録4

 

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 第1話↑

 

 系列店は「Marionetto(マリオネット。以下「マリオ」)」と言い、南五条西二丁目のサイバーシティビルというところにあった。サイバーシティはスターヒルズビルよりも大きなビルで一階に焼き肉店が入っていた。マリオはハードキャバなので当然ワンボックスタイプで、こちらもDior同様の高級志向というコンセプトで、店内の作りはしっとりとしていて落ち着いた雰囲気であった。

 従業員はまずボーイ長というのが一人いた。これは若く当時確か19歳だったと思う。パンクバンドのギターボーカルをやっているそうで、RIZEのジェシー氏に似てなくもないのでジェシーと呼ぶことにする。もう一人は背の高いイケメンで、カールスモーキー石井氏を怖くしたような感じだったので石井と呼ぶことにする。これはおれとタメ年だった。もう一人は部長という役職者であった。これは例えようがなく、茶髪で無精ひげをたくわえ、狸のような垂れ目だったので狸部長と呼ぶことにする。なんだか可愛らしい呼称になってしまったが見た目はギャングのようで如何にも夜の業界の人間といった感じである。新宿スワンに出てきてもおかしくない。当時23歳だったがとてもそうは見えなかった。狸部長は「第2営業部部長」という肩書きで、マリオとDiorの両方を統括している立場にあった。「第1営業部」がファッションヘルスなのである。

 彼等に共通していたのは全員イケメンであるということであった。そんな中に不細工さにかけては定評のあるなおれが放り込まれたのだからやってられない。しかも何度も言っているようにジョンレノン眼鏡で、映画版の「電車男」にかなり近い風貌であった。スタイリッシュな彼等とは何もかもが違っていた。

 マリオにはおれの他にランクルマンも一緒にDiorから移ってきた。こいつはイケメンではなかったのでそれが救いであった。奇妙だったのは石井がランクルマンに対してタメ語で「ランクルマン」と呼び捨てにしており、ランクルマンが石井のことを「石井さん」と呼んでいたことである。前述したとおりここは役職が上である方が絶対で、キャリアや年齢などは関係ないという軍隊のような組織である。にもかかわらずこのようになっていたのには訳がある。石井は出戻りなのだ。かつては石井がランクルマンに仕事を教える立場で、相当しごいてきたようだが、石井が一度辞めて戻ってきたときにはランクルマンは昇進してマネージャーになっていた。しかしかつての立場があるのでこのような関係になっているのである。このことは狸部長は快く思っていなかったが黙認しているようであった。

 運営する会社のクオーレとしてはDiorよりもマリオの方が先に出来た1号店であった。そのためかDiorよりも店内は広く収容人数が多かった。ハコが広いというやつである。それはいいのだがやはりこちらも客入りは良くなかった。というより端的に女の質が良くなかった。ブス率が異常に高いのである。総じてハード系キャバはソフト系よりサービスがハードな分女の質は下がる傾向にあったが、それにしてもひどすぎるんじゃないかと思わざるを得ない有様で、それは狸部長含め従業員らも認めるところであった。というのも昔(と言ってもこの時点でマリオは創立三年にも満たなかったのだが)この店の店長をやっていた男が揃えた結果がこの動物園なのだという。いや動物園なんて可愛らしいものではない。野獣珍獣ランドとでも言うべきであろうか。女が商品となるこの街で商品価値のない女を使って商売をしているのであるからそりゃ客も入らないというものだ。その元店長Kは女のルックスよりも仕事をちゃんとする女を優先的に入れたのだそうだ。Kはその後飛んだ(無断でいなくなり連絡が付かなくなること)のだそうで、その置き土産がいまだにマリオを跳梁跋扈し伏魔殿としているのである。狸部長はじめ彼らもそいつらを切りたくて仕方が無かったようで四苦八苦していた。そんな中にも二~三人はまともな女もいて、それが逆に「なんでいる?」と思ってしまうようなくらいであった。そんなモンスターどもでも商品は商品なので丁重に扱わねばならないのだから役職者連中の心痛たるや察して余りあるものがあった。

 いち下っ端ボーイにすぎないおれはそんなことまで考える必要もなく、営業中はビラに出される事が多かった。2月の札幌の寒さは非常に堪えた。もとよりおれは常人より寒がりで、以前やっていた交通警備員の仕事でも冬の間は人一倍寒がっていたのだ。店の制服は黒いスラックスに白いワイシャツに蝶ネクタイ、黒いベストであったが、その上に黒スーツを着、店から支給されたロングのダウンコートを着た程度で凌げる寒さではなかった。雪に吹雪かれた日などは泣きそうになったものである。

 

 

 

 店が西二丁目にあるのでビラも二丁目界隈から駅前通り辺りでやることが多かった。駅前通りはその名の通り地下鉄すすきの駅の出口がある通りで、最も人通りの多い場所であった。その代わりにビラや客引きの数も多い激戦区で、飲み屋や風俗目当てではない客も多く歩いているので初心者向きではなかった。それに比べると二丁目はビラ・客引きも少なく客も少なく平和であった。

 石井は店内業務こそそつなくこなせる奴だったがビラが苦手だった。前述したようにランクルマンが得意だったしジェシーもそうだった。ビラはアンツィオばりのノリと勢い、そして粘りとトークの上手さが必要となる業務である。おれもこの頃にはだいぶ慣れてきたのでそこそこ引ける(客を連れてくる)ようになっていた。何人引こうが歩合にはならずむしろ店へ連絡する電話代がかさむだけであったが暖かい室内に入れるのがありがたかった。それに客が増えてくれば店内業務に戻れる。ビラをやっている方が怒られないので気楽であったがなにせ札幌の冬の寒さは耐えがたかった。

 西2~3丁目ストリートにはとある一大勢力があった。ストリートギャングではなくLというJK(風)キャバクラがあったのだが、。そこのビラ隊が現役のJKで、自身の通う制服のままビラ業務を行っていた。彼女らは強かった。よく考えてみてほしい。男の黒服と現役JKとではどちらについて行きたいであろうか。もちろん店内で実際に接客するのは彼女らではないのだが、その効果たるや絶大なものがあり、2、3丁目のキャバのビラにおいては彼女らの天下であった。現役JKなので仕事は夜22時までだったのでそれまでは定置網漁師のように彼女らに荒稼ぎされ、我々は苦戦を強いられていた。彼女らはJKであることを武器にしていたので冬でもコートを着ずに制服が見えるようにしていたのは見ていて寒々しかった。

 この会社のキャバクラ店の黒服には役割分担があった。ひとつは前述したリストでこれは店の責任者や部長が担当することが多かった。もうひとつは「つけ回し」と言って、客につけるキャストの采配を行う者。マリオの場合45分セットの間に女が二人つく。最初の一人がダウンタイムを担当した後に二人目が付き、二人目はダウンを行う前にセットの時間は終わる。客とキャストの雰囲気などを見て場内指名を取れそうだなとかこいつは延長しそうだから二人目にいい女をつけてやった方がいいだとかを判断してキャストを采配するので高度な判断力を要するポジションである。なのでこれも役職者が行った。もうひとつはただのボーイである。客や女の子の注文を受けてそれを厨房にインカムで通し(マリオには厨房専属スタッフがいた)、出来たものを運んだりチェックアウト業務を行ったりといったことはボーイが行った。つけ回しとともに店内にいるのだが、つけ回しは客席を見ながら先に言ったような采配を考えているのでそういった雑務をやらせてはいけないことになっており、つけ回しにそれをやらせてしまう事態になるとボーイが怒られた。もう一つの役割が「フロント」であった。マリオネットはサイバーシティビルの八階だか十階だか忘れたがフロアの奥の突き当たりにあり、出入り口の並びに椅子が並べられていて客はまずここに座らされてフロントから説明を受けた。このときにきちんとシステムを理解させておかないと後々トラブルの元になるので慎重に行わなければならないのだがあまり堅苦しくならず、フランクに、客と仲良くなるのが肝要であった。というのも待たせるのもフロントの仕事であったからだ。客が増えてくれば当然待ち時間が発生する。客入りの悪いマリオと言えど給料日あとの週末の22時ともなれば待ちは出た。店内にある待合室に入りきれなかった客はフロントで待たせることとなり、フロント担当者がトークでいかに待たせるかというのが腕の見せ所であった。客が入店することなく帰ってしまうことを「パンク」と言ったが、そのうち待てずにパンクすることを「待ちパン」と言った。待ちパンさせないためにもフロントは、実際は1時間待ちなのに30分くらいと言ってその間トークで楽しませて時間を考えさせないようにしたり、「ダウンタイムが終わったらご案内できます」などと言ってみたり、嘘八百並べて客を待たせることに腐心した。待ちパンさせてしまうとインカムなり直接なりで罵倒の嵐が待っている。まあ大抵はみな忙しいときなのでインカムでやられるのであったが。フロントにはもう一つ大事な業務があった。マリオは手マンの出来るハードキャバだったので客に爪切りを渡して爪を切らせ、ヤスリをかけ、消毒液を噴霧するというものである。なにはなくともこれだけは必ずやってくれと念を押されていた。そして「カット」というのもフロントの仕事であった。これは店に相応しくない者を入店させずに帰すことで、大抵はヤクザカットが主であった。ヤクザは基本的に入店禁止であったのでフロントで断らなければならないのである。おれがフロントを担当しているときに一度ヤクザが一人来たことがあり、リストからインカムでカットしろと言われた。店先には監視カメラが仕掛けてあってリストはそれを見ているのである。カットの仕方としては待ち時間が無くても二時間待ちとか言う手法があったが、そいつは無料案内所で待ち時間無いと言われたぞと言うのである。そこから雲行きが怪しくなり、おれはインカムで助けを求めたが、「殴られたら助けに行くから言って」などと言われてしまった。結局まあ殴られることもなく帰ってくれたのだが帰り際にどこどこの組の名前を出して覚えとけよなどと言われた。あとは泥酔者カットや同業者カット、午前1時以降の警察カットなどがあった。このようにフロントは店の番人的な役割を担っていた。

 マリオの向かいがメンズパブとなっていたのでフロントをやっているとそこの従業員と会話になることもあった。メンズパブとはホストクラブのひとつグレードの下がる版といったところであろうか。女が付く飲み屋にもパブ、ニュークラブと言った序列があることは述べたが、そのパブに当たるのがメンズパブ(メンパブと略された)で、ニュークラブがホストに当たると言えよう。メンパブ従業員は「パブ男(お)」と呼ばれた。そのメンパブも暇なときは一人店先に立たされていて、自然と話すことになるのだが、話してみるといい奴が多かった。

 一度おれがフロントをやっていたときのことだ。その日も店は暇で、おれはフロントですることもなく突っ立っていたのだが、するうち向かいのメンパブの出入り口に40くらいの女が現れ、そこに敷いてあるマットに手をかけたかと思うとそれを持ち去って行ったのである。おれは咄嗟にメンパブのドアを開けてそのことを告げ、従業員が走って行ったが結局女は捕まえられなかったようだった。

 さてマリオにはDiorと違って厨房専属のスタッフがいると言ったが、この女のことを「ミキ」と仮称することにする。