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闇へのご案内~すすきの黒服、客引き体験録8

 マリオネットは盛岡店もあったのだが、そちらは儲かっていたようだ。キャバ、本州で言うところのセクキャバ、とりわけ手マン可能のハード系が、進出当時は盛岡においては他になかったようで、競合相手がいないのである。オープン当初は行列がどこまでも並んでいて営業終了までに全員入りきれないような状況だったという。石井も一時期盛岡店の方にいたそうなのでそういった話をちょくちょく聞いた。東北なら仙台の方が人口も多いし良さげな気もするが、仙台にはすすきのトップクラスのキャバクラグループの「ニンジャグループ」が進出していたのでああなるほどと思った。

 その盛岡の方の店を取り仕切っていたのが狸とは別の部長というやつであった。日サロで焼いた肌に茶髪、ブランド物の眼鏡にヒゲ。丸顔の狸と違い細面で如何にもヤバそうな見た目で実際ヤバかった。適当な仮名が思いつかないのでうんこ部長とする。うんこ部長も元々すすきのにいたのだが仙台店出店に伴いそちらに出向いたのだった。
 そのうんこ部長がすすきのに一時的に戻って来ることになった。おれの他の従業員はうんこ部長を知っているが、おれは初対面ということになる。他の従業員から聞くところによると従業員の腕を折るなどとにかく「イケイケ」だということで、おれは戦々恐々としていた。そのうんこ部長がマリオネットのリストに入る日が来て、おれは終始肝を冷やしながら開店準備をしていたが、営業が始まるとビラに出されたのでひとまずほっとした。
 例によって不人気店であるマリオは安売りでもしなければ客が入らない。おれは割と早い段階で45分半額の3500円で客を捕まえて店へご案内した。するとそのまま店内業務に残るということになり、料金をインカムで伝える際に「ヨンゴー半」と通したのだが、これがうんこに通じなかった。ヨンゴー半とは45分半額という意味で、もちろん他の従業員にも通じる用語だったのだが、うんこにはインカムで「ヨンゴー半ってなに?」と聞き返されたのである。要するに盛岡店では半額にする必要など無いし、すすきのでもオープン直後はどんな店でも客が入るから、半額が常態化する前に盛岡に出向になったのであろう。
 結局うんこがすすきのに居る間はおれは目立った粗相もなく腕を折られることもなく済んだ。しかしながら儲かっている盛岡との温度差は強烈に感じたものである。
 盛岡と言えば一時期盛岡店のスタッフとすすきののスタッフを入れ替えてみようという気違いじみた企画が社内で持ち上がったことがあった。いや、何人かの従業員をトレードしてみようという話だったかも知れない。ともかくおれは盛岡には行きたくなかったのでなんとか対象にはならないようにと思っていたのだが、あるとき従業員みんなで焼き肉を食いにいったときに、おれが盛岡冷麺を頼むと「タケちゃん、盛岡行きたいんじゃないのぉ?」などとランクルマンに言われてこの時は自分の注文を心底呪ったものである。結局その話は有耶無耶になって消滅したからおれは盛岡には行かずに済んだ。
 部長と言えば社内にはもう一人部長がいた。ファッションヘルス事業を統括している部長で、こいつもキツネ顔だったのでキツネと呼びたいところだがそのユーザー名はすでに使われているのでイタチと呼ぶことにする。イタチは短めの茶髪の、まあまあイケメンであった。おれに比べればどんなイケメンも霞んでしまうが、そこそこ頑張っていた方だろう。初めて見たのは確か静岡代表の誕生日の日だったと思う。その日営業終了後にDiorにマリオの従業員もヘルスの従業員も一堂に会しての酒宴となった。なにせキャバなので酒は売りに出すほどに備蓄があった。そこにピザの出前などした気がする。店の廊下に椅子を並べ、静岡を中心に囲みパーティとなった。イタチはじめとしてヘルスの見たことも無い従業員もみんな集まっていた。キャバクラの営業終了後だから午前の四時とかいう時間である。ヘルスの従業員は辛かったと思う。そして酒の用意やグラス洗いなどはおれたちキャバクラの従業員がやらされた。次から次へと注文される酒をつくったりグラスを洗ったりしていたら自分が呑み食いする時間など皆無であった。端的に言って馬鹿じゃねーのと思った。静岡はじめとしたバカ殿様どもが帰った後の乱離骨灰(らりこっぱい)、肉食獣が食い散らかした後のようなメチャクチャな有様を見てキャバ勢は嘆息を漏らしたのであった。
 

 

 

 

当時静岡は二十四歳で、部長勢は二十三歳とかだった。なので大変若い首脳陣であったが、「クオーレ」は独立した会社ではなかった。今もあるのかどうか知らんが「ビジョネア」とかいう会社内の一事業部門であった。この「ビジョネア」のオーナーというのがたまにキャバ店に顔を出してきた。一見普通のサラリーマンと言った風情の四十代くらいのおっさんで、マリオネットに普通に客として来店するのであった。VIPルームを貸し切り、女には身分を明かしているのかどうかは知らないがク○ニをしていくのである。クン○が出来る店ではないがしていくのである。それをおれから聞いたキツネは「クン肉マン」と称した。オーナーであるが支払いは領収書でしていった。それだけならまだいいが、オーナーが来店するときは大抵出来上がっているので従業員に絡んでくるのが大変ウザかった。一度おれがフロントに立っているときに来たことがあり、酔っ払ったオーナーがネチネチクドクドとしゃべり続けて仕事にならなかった。
 マリオもDiorも常に人手不足であったが、月曜日定休にしている時期と、定休日無しで従業員が交代で週に一度休むという時期があった。後者のときであったと思うが、黒服が狸とおれしかいないという悪夢のような日があった。何故そうなったのかは覚えていないが、とにかくそんなファッキンデイいやファッキンナイトがあった。狸は当然のように開店前の準備、掃除をしないのでおれ一人でやらねばならなかった。営業が始まってからは更に戦場の様相を呈していた。不人気店とはいえそれなりに客は来る。それをたった二人の黒服で回さなければならないのだ。おれがフロント、ウエイター、キッチン業務をこなし、狸がリストとつけ回しを担当した。おれが店内で忙しいときは狸がフロントに出たが、その途中インカムで「駄目だ、おれだと客が怖がってるからタケちゃん代わって」と言われて交代したこともあった。
 そんなこんなで目の回るような忙しさであったがなんとか回しきって営業終了に至ることができた。逆に言えば黒服二人でもなんとか回せる程度しか客が入らない店だということである。営業終了後には大量の洗い物がキッチンに残された。狸は「これある程度やったら残して帰ってもいいから」と言っておれに店の鍵を渡してどこかへ去って行った。が、残して帰ったら明日の開店準備時にそれをやらなければならないので全部洗ってから帰った。
 ある日曜日などは逆に(?)女が二人しかいなかった。元々日曜日は出勤率が良くないのだが終わっているこの店は在籍人数も少なく、そのような事態に見舞われた。しかもそのうちの一人は既述の元店長Kの遺した「Kチルドレン」であり、すなわち「珍獣パークマリオネット」を構成するブスであった。日曜日は一週間で最も客足の少ない日である。だから定休日にしている店が多いのだが、営業している店が少ないのならその分ウチに客が来るだろうとアホの首脳陣が考えて日曜日を営業し月曜を定休日としていたのだ(月曜日も日曜に次いで客の少ない日だった)。しかしいくらなんでも女二人はあり得ない事態である。女が二人しか居ないということは当然最大で二名までしか客を入れられないということである。こんな状況でよく開店出来たものである。その日のことはよく覚えていないが、まともな営業にはなっていなかったのは間違いないだろう。
 とまあこのように終わっている店&会社であったが、ある日マリオにキャバ勢の従業員が集められ、その場で静岡が「クオーレ」のビジョネアからの独立を宣言した。静岡はえらい自信満々に、ドヤ顔で語っていたが、その場にいた従業員らは内心大丈夫かよと思っていたに違いない。